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プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

大江健三郎「万延元年のフットボール」、本当のことを言うこと

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

万延元年のフットボール (講談社文芸文庫)

一日で読もうかと思ったけど長編だったので3週間かかった。450ページはなげーよ。村上春樹の「ダンスダンス」並の長さだった。

本当の事をいう

この作品の核心は「本当の事をいう」であると思う。俺が思うに小説は本当のことが書かれていればそれでいいと思う。この作品中に出てくる「本当のこと」とは意味が違う。なんというか作者の本心、もっといえば人間の根源にせまるものを書いたものがおもしろいんだ。

頭を朱色に塗り全裸で肛門からキュウリを差して縊死した友人が出てきたときは世の中に出ている小説を圧倒的に凌駕しているように感じた。

大江の作品にはいつもパワーを感じる。小手先で書かれた話とは違う人間らしさがそこにはある。体裁を整えたがる現代人が絶対に言わないようなセリフ。「本当のことを云おうか、蜜!!!!」背筋がしびれた。

人間はなにを考えているかわからない

自分が殺したことにした鷹四。しかし本当は逮捕されて自殺だとわかり釈放されることを望む。これは小説だけに出てくる極めてまれな人間ではないと思う。人間はなにを考えているかわからない。自分が考えていることなんて全く整理できていない。人殺しの映画を見たすぐあとにチャリティー活動に参加ってのもあるわけだ。

ましてや他人のことなどわかるわけない。大江の作品には他人のことを「他人ども」とよく呼ぶがこの表現を見るたびに自分と他人をひどく意識してしまう。

「個人的な体験」を読んで思ったのが結局自分の問題に関してそこまで他人は関心を持っていないんだということだ。作中に出てくる医者などを見ると本当にそう思った。奇形が生まれても生きることができないと決めつけそして実験サンプルとして扱おうとする。バードに対して配慮もくそもない。


話がそれたが「万延元年のフットボール」は今まで読んだ本の中で一番感じるものがあった。