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プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

大江健三郎「鳥」、人間には他人を拒む時期がある

大江健三郎「鳥」を読んだ。

おもしろかった。なぜなら今の僕の精神状態が健康とは言えず暗くネガティブで嫌なことは他人のせいにするような心情状態だったからだろう。

人間には他人を拒む時期があるという。それになぜか共感した。

外のみんなは他人じゃないか。僕の周りにいる鳥は他人なんかじゃない。でもそれは幻想だった。いや幻想なんか見ておらず勝手につくりあげていたんだと思う。鳥という逃げ道を用意してありもしない鳥にうっぷんをぶつけたり癒しを求めていたんだと思う。

最後母の気がくるってしまった。鳥が見えていた僕は鳥が見えている母の気持ちがわかるはずだから同情もできたんじゃないか。でも母も所詮他人。そんなにかまってやろうとは思わないだろう。

大江が何を言いたかったかはわからない。

でもこういう自分と他人をはっきりと分けて自分は他人と違う存在であると過剰に思うところに心奪われた。なんというか無視できない事実だと思った。実際自分も思っている部分もあると思う。他人との差異ばかり列挙して分析して安心したいんだろう。他人と違うことで自分を確立しいている気がする。他人と同じということが自分にとって一番嫌なところだから。本当はそういうことをいちいち考えてはいけないんだろうけども。

久しぶりに最後まで読めた話でした。