not good but great

プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

梁石日の壮絶な人生は映画「血と骨」よりも著書「修羅を生きる」によく表れていると思った!

ブックオフで小説「血と骨」を探しているとなかったので、この本を購入。「血と骨」以外にもいくつかあったのだが、どれがおもしろいのかわからなかったし、如何せんどれも分厚く長いので、薄いエッセイにした。また「修羅を生きる」読んだ後、2年ぶりに映画「血と骨」を再度見た。

先日、読んだ「タクシードライバー日誌」同様、梁石日の自伝的なエッセイである。今回は生まれてから、タクシードライバーになるまでを書いている。つまり映画「血と骨」で出てきた世界が描かれている。あの映画のような現実が本当にあるのだろうかと思っていたが、実際のほうが何倍もひどいと感じた。映画では金俊平役がビートたけしなので、小柄だったが本当はかなり巨漢だったようだ。扉をぶち破って家に入ってくるのも本当だ。

エッセイでは「血と骨」以前のことも書かれている。戦争がまだ終わっていないころ、大阪の東成に住んでいた著者は焼夷弾による空襲を目の当たりにする。目の前にいる大人に焼夷弾が直撃し、一瞬で肉体が粉々になり、鮮血が流れていたという。「プライベートライアン」の冒頭のような感じだったのだろうか。いや実際はもっとひどかったし、映画にもできない。


蒲鉾工場で働く従業員は何人かいたが、そのなかには金俊平に反感を覚えていたものもいた。その中の一人に金田秀がいた。彼が包丁を持って金俊平を殺しに行く場面があった。

P53
「はよやらんかい!ばっさり殺ってしまえ!」
と叫んでいた。自分でも信じ難い言葉が口から飛び出していた。

著者は父に向ってそう叫んだ。家族愛なんて考えられないくらい、金俊平は息子、梁石日にとっての悪魔だったのだと思う。

P58
「さあ、これを飲め!わしの金を食う奴は、わしの血を吸うのと同じだ!」

金貸し屋を始めた金俊平が借金の返済を男に迫る。その男の前で、湯呑みコップを噛み砕き、その破片で自分の腕を切るのだ。そしてコップに自分の血を注ぎ、男に飲めという。映画でもこのシーンがあったけど、なんの演出もない。本当にあったとは驚いた。

著者は金俊平との争い以外のことも書いている。それは後に作家になる基盤となる読書体験と詩の世界に入っていくことだ。このあたりのことは映画には出てきていない。張賛明役の柏原収史北朝鮮へ出発するシーンで別れ際、正雄に「詩をやれ」ということを言っているくらいだ。映画しか見てないと「なんで詩?」となるだろう。

著者は作家が幼少期によくやっているような、世界文学全集を片っ端から読んだみたいなタイプだったので、大学に進学するのかと思っていた。しかし神戸大学受験前日、飛田遊郭で宿泊しており、寝坊して受験をあきらめたそうだ。アウトローだ。幻冬舎アウトロー文庫の名に恥じてない。

著者は金があれば遊郭に行っていたらしい。この本の終盤で、仙台へ行った時も、夜の帝王と呼ばれるくらい遊んでいたようだ。全部風俗かもしれないから何とも言えないけど、壮絶な父や貧困、報われない人生を考えると、行き着くところは女や酒や博打、借金なのかなと思った。精神的な場末な感じ、選択肢のすべてが不幸であったことが伝わってくる。堕落、頽廃といった簡単な言葉ではとても片づけられない。

あとがきでは以下のように著者は書いている。

P232
ただ「修羅を生きる」を書く過程で、そして書き終えて私の半生を振り返ってみたとき、自分のあまりの自己中心的で破滅的な生き方に愕然としたのだった。それは父の生き方とどこかで重ねている自分を発見し、父に対する憎しみが実は自己嫌悪の裏返しであったことに気付いたのである。

映画でも姉に「父に似てきた。」と言われる場面がある。著者が苦悩を乗り越えることはないのではないだろか。簡単に終わる苦しみではなく、一生続く葛藤だと思う。作家になった今、振り返って「あのころは大変でした。」と言えないだろう。筆者にとっての修羅のような人生は現在進行形であり、死ぬまで続くのだ。

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