刑期を終え、娘の洋子に会いにいくも、高倉健演じる加納は声もかけられなかった。殺した罪を一生をかけて、償うことを決めた男はそんなことできるわけもなかった。手紙を受け取り、電話をしながらも結局会うこともせず。手紙配達人だった同じ組の武田が洋子に手をかけようとするのを見て、静かに応援する。武田の前で「本気か」と聞くときに、加納の男としての大きさを感じることができたような気がした。
洋子の好きなチャイコフスキーピアノコンチェルトをかける喫茶店のシーンでは、これまで見た高倉健の映画には無かった洋風な感じが伝わる。優雅な喫茶店の中で、加納が落ち着きもせず、コーヒーをそそるところはこれまでになかった。洋子にそのお店で、「おじさまでしょう?」と聞かれても人違いだと言って加納は去る。そこでチャイコフスキーがかかる。このような極道が舞台の映画の中で、このようなクラシックの音楽をマッチさせるのはすごいなあと思った。
加納の部屋に最初テーブルがあったのが、後半片付けられていて、彼は地べたに座っていた。15年の刑務所暮らしを通して、床に座る方が落ち着くのかなあと思った。
クロード・チアリの挿入曲。クロード・チアリは初めて知ったのだけれど、映画全体に華を添えているなあ。
クロード・チアリ 冬の華 - YouTube