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プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

「ふぞろいの林檎たち」 はFラン大学生が就職や恋愛における問題に真摯に立ち向かう姿を丁寧に描いたドラマでおもしろい!

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX

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1983年に放映されたドラマ。架空の4流大学、今で言えばFラン大学に通う若者たちが、学歴が恋愛や進路に暗い影を落としながらも、それを懸命に乗り越えようとする若者の姿を描いた作品(wiki参考)。

第一~四話までの感想
一昔前の大学生の姿に目を奪われる中、それに劣らず圧倒的な存在感を放つのが主題歌、および挿入歌を歌うサザン。今も昔もトップランナーである彼らの歌は、30年前も世間を魅了していたのかと思うと、すごい。でもちょっと「いとしのエリー」が流れすぎて、くどいところもある。主題歌だからしょうがいなのだけれど。風俗店で働いていた女の子の源氏名がエリーっていうのはないだろー笑。


Ya Ya (あの時代を忘れない) / Southern All Stars 投稿者 mercury-hmr
挿入歌にあったサザンの曲。

学歴をここまでストレートにテーマにしたドラマや映画は見たことがない。このような構想は30年よりも前にもあったとは思う。ただそれを描いたところで、空しく、残酷な現実を突きつけられるだけではないかという結論に至ったのではないかと予想する。でもそう早とちりしないで、丁寧に現実にある感情を描こうとしている感じがある。就職できない、モテないのほかに、親の家業の継承問題とか、兄の姉が心臓病で病気だとかいろいろある。そのへんをどう表現していくのかが今後の見所なのかなあと。

携帯電話やインターネットがない時代
30年も前になると、大学生の下宿先に黒電話が家電として置いてある。主人公の岩田に連絡を取る手段は、直接会うか、この下宿先に電話をかけるしかない。掛かってくる電話はどこから掛かってくるかも分からない。数ある電話のシーンで、相手が誰かわかってないときがあったのが時代を感じる。看護学校の寮では、玄関先に寮共有の電話がある。その電話番という役があるところも面白く見てしまった。電話番が一度電話を出て、それから相手に取り次ぐのだ。それは寮内アナウンスで「XXさん、電話ですよ」と放送する笑。

誰かと喋りたいときに、今のように一対一で秘密に離れた人と話すことが出来ない。SNSが進み、いくら私生活がオープンとなったとは言え、これでは昔の方がオープンだっただろう。今誰と付き合ってるか、どんな女の子と遊んでいるのかが、電話を介して家族にばれてしまうのだ。

第五話「親友は誰ですか」
石原真理子演じる晴江が、リストカットを図った女の手当てをする場面があった。表情は明らかに「こんな女のどこがいいのよ。」というもので、おもしろかった笑。相変わらず柳沢慎吾演じる実はアホだなあ。なんで晴江に今中手川とデートしているのかなんて聞くんだろう。でもそういう役柄ってドラマを制作する上では、案外必要なのかもしれない。みんながみんな正しい行動を取る人間ばかりだとつまらないと思うし。そういう意味で、俳優としての柳沢慎吾はかなりオイシイ位置にあるだろう。

第六話「キスしてますか」
エリート街道への道が決まった岩田は、将来と現実のギャップに苦しむようになる。将来のために英語の勉強に時間を費やして、友だちや陽子に会わないようにしていたり。前回晴江が言っていたセリフが印象的。

男は就職決まんないとわかんないね。

一方、実はどう見ても不細工な綾子とデートをしていた。それを街の人がおもしろがって見ているときに、実がどこか遠くの方を見ながら、彼女の手を繋ぐ場面があった。地味だが実の優しさが伝わってきてよかった。

第七話「どんな夢見てますか」
中手川のお兄さん役の小林薫の地味な感じは本当にお兄さんの性格にマッチしているなあと思った。姑のイライラする発言にも黙っていて、朝はタバコを吸いながら新聞を読んで構えている。

このドラマの良さの一つは舞台が4回生の春という時期ということにある。モテなくて彼女ができない学生に取っては就職よりも恋愛をしたい思いでいっぱいだと思う。残り少ない学生生活で一つでも良いからちゃんとした恋愛をしたいという気持ちがあるだろう。特に中手川のよくわからないくらいの一生懸命さにそれが現れていると思う。就職とか将来のこととか家族の問題とか悩みはつきないけど、それはちょっと置いといて、外大に通う女の子とその彼氏の間を行き来する。

第八話「大きな声が出せますか」
晴江が岩田はわざとケンカに行かなかったのではないかと言っていたが、その通りなのかもと思った。一流の家庭に育った岩田はただひねくれて、一流を馬鹿にしているだけなのかも。内定が決まってから、英語の勉強を喜んでやっているし、結局挑んだケンカもボコボコにされていた。ボコボコにされてたのもわざとなのかなあ。ドラマの中でも最初の方の岩田とは言っていることが逆になっている。一流じゃなくても中身で勝負すると言っていたのが懐かしく思えた。

岩田を看病している中手川、実を見て、このドラマに出てくる男は声がデカいと思った。タイトルにもあるようにそれは中手川の兄にももちろん言える。自分が正しいと思うことに向かってみんな突き進んでいる。こんなことを書くのは恥ずかしいが、この愚直さが30年経っても、このドラマが色褪せない理由の一つなのかなあと。自分とちょうど学年が同じ岩田を見て、続きが気になるばかりだ。

第九話「ひとの心が見えますか」
岩田の内定が取り消しになってしまった。実(みのる)はそのことに対して、岩田と一緒に笑っていた。そこに実の良さがあると思う。周りが同情してくれる人ばかりだと鬱屈するから。

第九話にもなって気づいたが、僕はこのドラマに登場する女性が全員嫌いで、男性の方はほぼ全員好感を持てる。女性の方は「気持ちを察しろ」と泣き喚き、ぐちぐち文句ばかり言ってるだけだから。男性の方では、第九話では特に中手川の兄が良かった。これまで怒鳴ったり、自分の意見を絶対通すというよりは、黙って我慢しているタイプだった。この回では、奥さんが探すということになり家を飛び出していく。中手川が大学があるから店番できないと言い訳をたれるも、兄は「知らん」と言って出て行くところがかっこよかった。

最終話「胸をはっていますか」
いよいよ最終話。中手川の兄が出て行ったこともあり、店を岩田や実で手伝うようになる。そこに陽子、晴江も加わる。そんな中、本田が中手川の店に訪れ、友だちがずかずかと店に入って手伝っているのを見て、「いいね」と言う。ガリ勉本田が、友情や人間的な感情を感じたことがあまりなかったという設定はありきたりだが、やっぱこいつも人間なんだと思ってしまって、本田もええやつやんと思った笑。そのあと、本田がバイクに乗って配達を手伝うのには笑ってしまった。さらに中手川の兄が妻幸子を連れ戻すことになった時、本田は一緒にみんなで飲もうと提案する。ちょうどいい意見を言っていて、あれはさすが頭良いなとみんな思ったはずだ。すぐにその後、本田は余計なことを言ってしまったと思って、次のセリフを言う。

本田「いいもんだね。みんなで心配してさあ。ついくちばしいれちゃった。」

本田が今までで、一番素直になったところだなあ。

ラスト。耕一(中手川の兄)と幸子が帰ってくる。いつものように文句を言うお母さん。「他に女なんていくらでもいるじゃないか。つまらない意地はって、今の若いもんでもそんなこと言わないよ。」とお母さんは言う。その場に居た全員に刺さる言葉だ。今までの話を通じて、みんなそれをどこか心の奥で思っていたんだと思う。第九話で、出てくる女性が嫌いだと言ったのも、言い換えればみんながそういう気持ちを持っていたことに原因があったからだろう。そこで耕一が堂々と幸子への思いを言う。

耕一「俺は幸子じゃなきゃ嫌なんだ。」

グサりと刺さる言葉だ。世間体、周りの目をなんて知らない。ただ自分の妻を愛するという堂々とした態度に感動してしまった。

聞いているみんなの気持ちを代弁してくれたのが、本田の彼女だ。

本田の彼女「そういう・・・。そういう恋愛したい。」

最後は就職活動を始める場面で終わる。岩田、中手川、実が胸をはって生きてく姿がかっこよかった。