not good but great

プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

高倉健「君よ憤怒の河を渉れ」は「こんなのありえない・・・でもそれが映画」と言わせるアクション超大作

検事の杜丘(高倉健)は突然、強盗、殺人、強姦容疑の濡れ衣を着せられる。事件の真相を掴むべく、杜丘が日本中を逃げ回るアクション超大作。

こんなのありえない・・・でもそれが映画

こんなのありえない・・・でもそれが映画だと言わせるようなおもしろさがあった。

熊に襲われる
北海道で熊に襲われた娘を杜丘が助けるところがあるけど、熊がちゃっちい着ぐるみ。1976年の映画だから仕方ないのか・・・。ウルトラセブンではもっと精巧なものを作っているのに。しかも熊が出てくるシーンが2回ある。どちらも偶然熊が登場する。

無免許でセスナを運転
セスナの免許もっていないのにセスナを操縦できたり。加えて自衛隊の飛行機も撒ける力量。日本にこんなやついないだろ・・・と思ってしまう杜丘の野心に人々は惹かれるのではないだろうか。

新宿を馬で暴走
杜丘を助けるために実家が牧場経営をしている真由美が、馬を暴走させる。馬に乗った真由美は、警官から逃げる杜丘を助け、後ろに乗せて機動隊をも突破する。都会のど真ん中を馬で逃げ切れるところがすごい。警官も警官で周りに市民がたくさんおり、パニック状態になっている中で、拳銃を撃ちまくる笑。


挿入曲がシーンに合っていない

エビスビールのテーマ曲みたいな曲が挿入曲として使われている。真剣なシーンでもコミカルな雰囲気を出すこの曲が使われているから、曲が浮いて聞こえる笑。

映像の色使いが個性的
回想シーンではセピア色に血だけ真っ赤に色を出したり、赤にグレイのモノクロで朝倉代議士飛び降りのシーンを表現したりと「おっ!これはなに?」と引きつけられた。

カッコいいセリフ

男にはね、死に向かって飛ぶことが必要なことがあるんだ
助けた娘・真由美の父(大滝秀治)が逃亡中の杜丘にセスナを貸すシーンがある。当然、それは危険だから、真由美は止めようとする。

真由美の父「男にはね、死に向かって飛ぶことが必要なことがあるんだ。杜丘君は今賭けているんだ。」

杜丘「そうなんです。僕はこの賭けをやらなければ、生きている意味がないんだ。」

女は黙ってろとシャットアウトするようなことは現代ではなかなか言えない。でもこのシーンは男女とも背筋がピンと伸びるような気持ちになるのではないだろうか。

法律破ってでも
逃げる杜丘は高熱を出し、路地で倒れてしまう。それを見つけた立川の女(倍賞美津子)は家に杜丘を匿まう。

立川の女「居たかったら何日いてもいいよ。」

杜丘「ありがとう。だがどうしてもしなきゃならないことがある。」

立川の女「法律破っても?」

杜丘「(うなずきながら)法律破ってでも。」

笑う立川の女。

真実を掴むためならどんなことでもするという強い気持ちが表れているセリフだ。

中国での反響

文化大革命後の中国では外国の映画を見ることは難しかった。数少ない見られた外国映画が本作だ。当時中国の人は文化に飢えていた。そんな中で、この映画を見て、セスナから見る日本の自然や高倉健のワイルドさ、真由美の大胆でひたむきな心に魅了された。真由美役の中野良子はこの映画を撮った後、女優の仕事を減らし、中国と日本の友好をはかる仕事をしていたそうだ。37年前の映画だけど、現代の日本で生きる僕にも届く良さがあり、それが37年前中国と日本の架け橋になっていたことは誇りに思う。

・当時の中国のことがわかる参考ページ
『人民中国』