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中東での日本人人質事件から帰国した被害者が、主人公の映画「バッシング」を見た感想と粗筋(ネタバレあり)

粗筋

中東でボランティア活動をしていたユウコは現地の武装集団に捕まり人質に取られる。日本政府によって彼女は無事救出されたが、帰国した彼女を待っていたのは誹謗中傷の嵐だった。事件から半年経っても、イタズラ電話が鳴り響く。ユウコはラブホテルの清掃員として働いていたが、ユウコのことが職場で噂されるようになってから職場の雰囲気が悪くなる。そしてユウコは解雇される。

ユウコの父親タカシの職場にも、中傷の電話が耐えない。しびれを切らした会社は、タカシに退職するよう申し出る。タカシは耐えられなくなり、30年勤めた会社を辞職する。タカシは昼間から酒を飲み、ユウコにこれからどうしようかと話を持ちかけるが、ユウコは自分を責めていると勘違いする。一家に二人も失業者が出て、家族はバラバラになっていく。

タカシは自殺した。残されたユウコと義理の母親ノリコ。ユウコはタカシの保険金でもう一度中東へ行くと言う・・・。

感想

ユウコの表情の変化
ユウコが周りの人からどんどん信頼されなくなっていく様子を見るのは息が詰まる。コンビニの店員の目線一つとっていても、ユウコだと認識しており冷たい視線を送る。ユウコが希望を持つ唯一のシーンは、彼氏に会いにいくところだろう。会おうという電話をもらって一度は断るが、会う約束をする。そしてマウンテンバイクに乗って約束の場所に行く。空は曇っており、どんよりしているが、ユウコの顔には少し笑みがこぼれている。自分の彼氏は自分のことをわかってくれるかもしれないという望みだったのだろう。しかし彼氏は気持ちとは裏腹に、ユウコは変わったと言って責め立てる。帰りの自転車は、こわい顔をしている。その表情の変化を見るのがおもしろかった。

ユウコの家
ユウコの家はぽつんと立っているアパートだ。スーパーの前であった同級生との会話から、以前からそこに住んでいたようだ。周りに建物がないから孤立した印象を受けた。ユウコが家に入るまでのシーンが数回あるが、いずれも時間をかけて映している。毎回自分の家に入るだけなのに、玄関前になると足取りが重くなるのは、自分の家族までにも裏切られるのではないかという不安からだったのだろう。