not good but great

プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

「ラストタンゴ・イン・パリ」を見た感想(ネタバレあり)と大人になれないポール。

パリだから、英語じゃなくてフランス語だから、タンゴだから、ちょっと画面が茶色っぽいからお洒落に見えてしまった。けど中身はお洒落でもないように感じた。特にポールの子どもっぽさがそれだ。妻のローザが自殺してしまった後、ジャンヌと二人で名前を明かさない秘密の生活を送るようになる。ジャンヌには愛していると繰り返し言い、ちょっと大人な立ち位置でジャンヌを魅了していく。でもローザの死体の前で泣くポールは子どもそのものだと思った。ジャンヌは映画監督気取りと結婚することになる。ジャンヌは最初、ポールと生活をしたアパルトマンに住むことを欲するが、ポールが見つからないので、少し熱が冷めていったように思えた。名前の明かさない生活は、人を魅惑し、辛い現実から一歩遠のいた目線を提供してくれた。しかしそれも長くは続かず、どこかジャンヌの中で、このままで良いのだろうかという疑問が出てきたのではないか。

終盤タンゴのコンテストでは、タンゴを見ている二人が、まるでタンゴのリズムに乗れない子どものように見えた。「タンゴのステップをする脚を見るんだ」とポールが言っているが、またそれはジャンヌを従えようとする子どものような目線に感じる。ポールが酔ってジャンヌとタンゴを踊るが、ジャンヌはもう付いていけないと言っているようだった。異質なセックスを求めたりするポールが振り返ると少し哀れに思えた。ジャンヌが銃で撃ったのは勢いだったのかもしれないが、それしかポールを止める手段がないくらいにポールは墜ちていたように思う。これはパリの華やかエッフェル塔凱旋門なんて全く似合わない、寂しい映画だと思った。