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プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

高倉健が元高校球児を演じている「居酒屋兆治」は「人が心に思うことは誰にも止められない」というメッセージに尽きると思った

元造船員の英治(高倉健)が脱サラ後、居酒屋兆治を切り盛りしていた。英治は結婚をし家庭を持っていたが、幼馴染で元恋人のさよのことが忘れられなかった。英治とさよは結婚を考えていたが、お互いの貧乏を考え、片方が幸せな道を歩むことを選ぶ。さよは牧場を営む結核持ちの神谷と結婚して家庭を気づいた。当時結核と言えば、今で言うガンのような難病だったから、数年と命と思われていた。しかし神谷はなかなか死なない。神谷が死んで、お金を手に入れて、それからもう一度、英治と一緒になろうと考えていたさよはもう我慢の限界だった。さよは牧場に火をつけ、家出を繰り返す。

見終わって振り返ってみると、英治とさよが対面で話したのは、さよが牧場の火災から戻ってきて、居酒屋に寄ったときの2,3分しかないということ。その次に英治が会うのはさよが食道静脈瘤破裂で死んでいるところだから、悲しい。

ちょっと気になったのは、くさいセリフ、表現があったこと。一つはタクシー運転手の秋元が死んだ妻を思いながら金属バットを抱いて寝ていること。金属バットが冷たいのはわかるが、なんかバットというのが元高校球児の英治にも関係するし、ややこしい。もう一つはさよが自分のことを檻に入って、見せ物にされていたキングコングに例えたこと。キングコングと境遇は似ているけど、風貌がかけ離れているので、ちょっと違和感があった。

腹が立ったのは、さよに結婚を申し込んでいた英治の元同僚の越智が童貞だったこと。一夜ともにしたくらいで、舞い上がり、さよを苦しめたことが腹立たしい。またそれを英治の前で告白しているのも、癇に障る。英治がぶっ飛ばしてくれればいいのにと思った。


英治の妻、茂子役の加藤登紀子が最後のシーンを演じたときのことを語っている。

茂子「人が心に思うことは誰にも止められないもん。夢追いかけて、行ってしまう人を止めることはできないわ。私、あんたも行ってしまうかもしれないと思ってた。うらやましかったわ。」

録音は紅谷愃一。話は変わるが、この人は村上龍のエッセイ「龍言飛語」に出てくる。砂漠の真ん中で映画を撮っているところに村上龍が遭遇するのだ。