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江角マキコはショムニだけじゃない、映画「幻の光」(宮本輝/原作)を見た感想

粗筋

同じ地元・尼崎で育ったユミコ(江角マキコ)とイクオ(浅野忠信)は夫婦で、第一子が誕生して3ヶ月が経っていた。イクオは町工場で働き、ユミコは赤ちゃんの世話をする主婦。幸せな生活を送っていたように見えたが、イクオが突然、線路の上を歩き電車にひかれて自殺する。

数年後、ユミコは近所の人の計らいで民雄を紹介してもらう。民雄は妻を亡くしており、一人娘を持っている。残された子どもと一緒にユミコは能登半島の輪島に行く。輪島は小さな漁港の街で、閉鎖的な社会がそこにはあった。

新しい家族でうまくやっていきたいと思うも、夫の自殺から時が止まっているユミコ。イクオはなぜ死んだのか・・・その思いだけが常にユミコの頭の中にはあった。

感想

静かで地味な江角マキコ
北陸の地味で、寒い海がこの映画の静けさを際立たせていると感じた。主演の江角マキコのデビュー作である。彼女のイメージはショムニであり、グータンヌーボの司会であって、明るくはっきりと自分の意見を持つ女性と思っていた。しかし本作はそのような女性ではなくて、いつも黒い服を来ていて静かな女性だ。それでいて、イクオと一緒にいるときは楽しそうに関西弁で冗談を言うような人である。

イクオは線路の先に光を見たのか
この映画のタイトルでもある「幻の光」。これは民雄の父が漁船に乗っていたころ、沖が光っているのを見ると、自分が誘われているような気がしたと話していたエピソードから来ている。確固たる理由がなくても、光を見ただけで、死んでもいいと思ってしまう。本人はふいに思っただけかもしれないけど、残された周りの人は苦しみ続けるのだ。

僕は光を見たのではなく、理由があって自殺したのだと思う。それは死ぬ前に喫茶店に寄ったり、傘を貸してもらうためだけに自分の家に寄ったから。最後に親しい人に顔を見せておきたいと思ったのではないだろうか。肝心な理由はわからない。甲子園にチャリを盗みに言ったのはウソで、どこかで浮気してたかもしれない。その罪悪感?変な推理だから違うと思うが。