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プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

尾形乾山はメディアアーティストそのものだった 六本木・サントリー美術館「着想のマエストロ 乾山見参!」展


六本木・東京ミッドタウンにあるサントリー美術館で行われている「着想のマエストロ 乾山見参!」展 の終了が近いと聞き、滑り込んだ。(7/20まで)
サントリー美術館「着想のマエストロ 乾山見参!」展 開催 会期:2015年5月27日(水)〜7月20日(月・祝) 2015.2.26 ニュースリリース サントリー

というのもメディアアーティストであり、筑波大助教授である落合陽一さんが出演する番組で、乾山展のことが紹介されており、興味を持った。(再生時間1:45:20から乾山展のことが話されます。)結果として陶芸について全然詳しくないけど、解説が充実していて楽しめた。

展示構成に基づいて、感想を書いてみる。

第1章 乾山への道 ― 京焼の源流と17世紀の京都

最初から見に来た人を驚かせるという感じではなく、粛々と静かにみんな見てる感じだった。

第2章 乾山颯爽登場 ― 和・漢ふたつの柱と大平面時代

ここは特に面白く、器を絵で飾るのではなく、絵に合わせて器の形を変えるということを乾山はやったそうだ。乾山がやったことは、器をメディアと見れば、表現したいものに合わせて、それまでのメディアを変えるメディアアーティストそのものではないだろうか。

第2章あたりから、まわりのマダム達が、作品の感想についての口数が多くなったように思う笑。

第3章 「写し」 ― 乾山を支えた異国趣味

ここでは海外の陶磁器を参考にして、乾山自身が日本流にアレンジしていく。

あくまでオリジナルは着想の原点としてその持ち味を生かしつつ、さまざまな要素と組み合わせて新たな意匠にまとめ上げるのが腕の見せ所でした。

これはテクノロジーマッシュアップだ。

第4章 蓋物の宇宙 ― うつわの中の異世界

ここでは器に蓋を設けて、器の内側と外側のデザインを変えることを乾山は試みた。まさしく文字通り「蓋を開けてみると」の世界で、開けると外側と全く違うという面白さがあった。

この蓋物に共通して表されるのが、外側の装飾的な世界と対照をなす内側のモノトーン空間です。それはさながら蓋を開けて初めて明らかとなる「異世界」。この世ならざる世界の扉を開けてしまうこのうつわは、未知の体験へ誘う一大イベントを演出したことでしょう。そう、乾山はこの蓋物でひとつの「宇宙」を作り出してしまったのです。

「宇宙」は大げさかもしれない笑。

第5章 彩りの懐石具 ― 「うつわ」からの解放

ここでは歌や漢詩が描いた情景を器に描くということをやっていた。竜田川という歌の題材によくされる川があるのだけど、それを器にしているのがすごかった。絵に合わせて、器の縁の形を変えるだけではなく、器の底を深くして、川底の立体感を演出していた。

第6章 受け継がれる「乾山」 ― その晩年と知られざる江戸の系譜

乾山の窯は、乾山の死後、一旦途絶えるのだけど、半世紀を経て、乾山の着想を継承する陶芸家が出てきた。時代を超えて、注目されているのがすごい。

まとめ

最初は「陶芸なんて地味でしょ」と思っていたけど、乾山の攻めの姿勢は全く地味ではなかった。陶芸にはキャンバスに描く絵だけではどうしてもできないようなことができるので、絵画とは違った面白さがあった。