not good but great

プログラミング、アート、映画・本の感想について書きます。

映画「死んでもいい」で、大竹しのぶの長回しを物ともしない演技に脱帽した

失業した平野(永瀬正敏)はふらふらと大月駅を降りて職を探そうとしていた。駅で偶然、名美(大竹しのぶ)とぶつかったとき平野は一目惚れしてしまう。平野はそのまま名美が勤める不動産屋までついていき、名美の夫・土屋に頼み込み、そこで働かせてもらう。平野は名美をものにするために、名美を襲う。土屋との結婚は年が離れていたこと、それと土屋は子どもを作ることができなかったことから名美は平野に惹かれていく。決して報われない関係を前に、苦悩する二人を描いた映画。

長回しのオンパレード

監督の意向
この映画は本当にカメラを切り替えない長回しが多い。監督の意向もあって、折角ノリに乗った役者の演技を途中で切るよりも、そのまま持続させることにしたという。

大竹しのぶの演技
役者にはそれだけプレッシャーがかかると思うけど、それに十分耐えているのが大竹しのぶ。狂ったような顔をしたり、報われない恋を楽しむような顔をする。何を考えているのか途中でわからなくなるほどだ。

ドラマ「男女7人夏物語」ではひょうきんさも見せていたけど、本作では通じてシリアスな雰囲気を出している。平野が襲った後に、平野が薄気味悪く笑うのだけど、名美は無表情で2Fのベッドに上がる。襲われる前と後で全然違う表情には驚いた。

元気ですか?!

監督がインタビューでも答えていたけど、ボートの乗り場でのシーンはとても印象に残っている。夕焼けを背景に、ゆらゆらと揺れるボロい乗り場が、先の不安を案じているようだ。でも夫から離れて、平野との時間を過ごせる嬉しさがあるように感じる。

平野がボートに隠れて、名美は平野を見失う。先に行ったのかと思ったら、後ろから平野がこう叫ぶ。

平野「元気ですか?!名美さん!!元気ですか?!」

名美「はいっ!!」

凄まじいことがあった関係なのに、どうしてそんなことが言えるのか。そうと思わせるくらい二人の世界が如実に表れているからすごい。