黒木亮が味の素を取材した本。各国の文化を知れて面白かった。国ごとにメモを書いておく。
エジプト
- 庶民の買い物の90%はスークと呼ばれる小さな商店の集合のような市場で行われる。スーパーは稀。
- まず小さな商店に直接味の素の販売しその後スーパーなどに販路拡大する
- 味の素エジプト支社では社訓を朝礼で暗誦するようなバリバリの日本企業スタイル。それを現地のエジプト人が暗誦する。
- 非常にコネを重視する。役所での手続きは普通にしようと思ったらすごい行列に並ぶ必要があるが、知り合いと一緒に行くと行列に並ぶ必要はない。
- エジプトでは四分の一の人は文字読めないので選挙の時は投票表紙に出馬人に対応した記号(絵)を書く。ちなみにアラビア語は書き言葉と口語が大きく違っている。
- エジプトではイスラム教徒が多くラマダンの習慣もある。ラマダン中はみんな夜は大量に食べて明け方まで飲み食いするため寝不足になる。そして日中飲み食いできないのでイライラしており揉め事がおこりやすい。
- ラマダン中は会社をズル休みするエジプト人がたくさんいる
- イスラム教では密室に未婚の男女が二人っきりになってはならない。味の素の社員がエジプト料理研究のためにエジプト人女性に料理をしてもらいに向こうの家に行くor家に招く提案をしたが宗教上の理由から断られていた。夫が同席していたら大丈夫らしい。
- イスラム教徒の女性が頭に巻くヘジャブは女性にとって下着のような感覚なので人前でそれを外すということは大変恥ずかしいことである。味の素の社員がホームパーティ的な催しをしたときに料理を女性陣に任せていた。そのとき女性たちはキッチンでヘジャブをとっていた。何も知らずに味の素の男性社員がキッチンを覗くと女性たちは悲鳴をあげて頭を手で隠した。これはまさしく両者カルチャーショックだったと思う。
フィリピン
- 大卒はプライドが高く、中卒は計算ができないので高卒を営業マンとする
- 第二次世界大戦末期はフィリピンは日本軍の戦いの場所だった。40万人くらい日本兵が死に現地民も10万人死んだ。1960年代ごろは反日感情は高かった
- 佐藤栄作首相がフィリピンを訪問した時にフィリピン人は「アジノモト!」と叫んで出迎えた。それくらい味の素は浸透していた。
- 戦後の輸出業で大きな功績を残した企業はトヨタなどがあるが味の素もその一つ
- 1960年代はフィリピンは貧しく、1回の買い物は4円とかそれくらいの額。めちゃくちゃ貧しいので味の素を小さな袋にして売ることにした。
- 問屋に下ろすのではなく小さな商店に現金で売ることを徹底した。問屋だと居留守を使って売り上げが回収できない、偽物の小切手を使う、わざと小切手の数字を間違うなどの不備が横行するため。
タイ
- フィリピンの販路拡大に成功した古関という営業マンはその後インドネシアに移住。そこでも業績を7倍にした。すごすぎ。その後1980年台にタイ味の素社長となる。
- タイでは味の素の原料はタピオカの澱粉。ちなみにナイジェリアでは味の素の原料は豆。
ベトナム
- 戦前はガチの社会主義だったので戦後、セールスという職種を経験したものがいなかった。全員セールス未経験。
- ベトナムでは履歴書に1975年(ベトナム戦争終結の年)以前の親の職業を書く欄があり南ベトナム軍の軍人だと様々な差別を受けた。例えば子どもは大学進学できないなど。大学進学については賄賂を渡せば進学できる裏ルートはある。
- ベトナム戦争中に中部に派遣された韓国兵は強かった。トゥイホアンという都市には韓国人とベトナム人女性との子どもが1,2万人ほどいる。
中国
- 駐在員が何か問題を起こす時の原因は金か女が多い。なので上司は駐在員のもとへときどき訪問し自宅を訪ねて質素な暮らしをしているかをチェックする。この検査に罰がつくと出世しづらくなる。
- 現地の人の服を着て現地の人が食べるものを食べて現地語を話せるようにならないとその国のことはわからない。経済統計を読んでも意味がない。飲み屋のねーちゃんに話を聞けとのこと。
ナイジェリア
- マラリアにかかるとマラリアの原虫を退治する薬がかなり体に負担がかかるので治療中もしんどい
- サルモネラ食中毒にもよくなる
- 強盗が多い。道に釘をまいて車をパンクさせて強盗する手法もある。本の中で味の素の社員が車強盗に遭う話があり非常にまずい事態になったが強盗が何も襲ってこなかった。話を聞いてみると駐禁違反を取り締まる三人組だった。それでも運転手を羽交い締めしたりはしていたw
- 交通がカオスで一方通行の道を逆走するのは普通
- 海外では人前で叱るというのは反感を買う行為。フィリピンなどでは人前で叱責した日本人が射殺されたこともある。こわすぎw。このような事業があってもナイジェリアの日本人駐在員は叱りまくっていた。
- 警官は大卒なので超エリート。なので警官自身はプライドが高い。街の治安が悪いので警官に護衛頼んだがその警官が市民に対して横柄な態度をとることが多い
- 警官にとって都合が悪いことがあるとすぐに拳銃を抜いて威嚇する
- 一度空港で飛行機に乗る時にチェックインがギリギリになることがあった。しかし長蛇の列。そこで護衛を頼んだ警官が列に並んでいた人に銃を向けて順番抜かしをしてチェックインに間に合わせるという荒技をやった。味の素社員は激おこだったけど当の警官はいまいち納得がいっていないようで面白かった。無茶苦茶すぎる。その後その警官は改心して銃を人に向けなくなった。
インド
- インドの北部はチャパティ、南部は米をカレーと一緒に食べる。実はナンはそこまで日常的に食べるものではない。なぜかというとナンを焼くには大きな窯が必要だから
- インド四番目に人口が多い都市チャンナイは年中めちゃ暑い。hot, hotter, hottestという季節しかないというジョークがある
- ヒンズー教では牛は食べないが革製品の加工などをしている最底辺の人々は革の加工の工程で牛を処理することもあり食べている。
- インドでも賄賂文化がある。特に役人は賄賂を要求してくる。賄賂に応じないと細かい法律の違反とかを追及してきて金を払えと言ってくる
- インドが人口が多いのに経済的にそこまで発展していないのはこういう賄賂文化も一つの要因だろうな
- 郵便局員にも賄賂というかチップをあげる必要がある。あげないと郵便物を捨てられるw
- インド人社員の不正を追及すると目を離した隙にその社員が首を吊って自殺したという話があり衝撃的だった。
- インド人を教育するのは非常に大変。注意しても直さないので注意した後に理解した内容を話してもらうというやり方が有用だった。
- 工場で働くインド人に対して工場でやってはいけないことを理解してもらうのも大変。例えば工場内を走ってはいけない、勝手に機械を操作してはいけない(オペレーターという操作担当者がやる)、サイズのあった作業服を着るなど。