「読者ハ読ムナ」
点数:4.0
漫画「うしおととら」の作者である藤田和日郎が漫画論を語った本。藤田さんは漫画アシスタントを数人雇っており、そのアシスタントから何人も有名漫画家を輩出してる。例えば烈火の炎の安西さん、金色のガッシュの人など。
藤田さんの教育論がまとまっていて漫画だけではなく創造的な仕事をする上でためになる本だった。
改めて感じたのは創造的な仕事をすることは常に
自分の外部
と
自分の内部
へ向き合う必要がある。
外部は主に他者の目線、客観性である。情報を伝える上でこの視点がないと伝わらない。
また内部へ向き合うということは自分の好きなものは何か、自分の得意・不得意は何かについて徹底的に言語化することである。
自分も動画作りをする上で大切なことなので読んでよかった本でした。
以下メモ
- 藤田さんの仕事場は無口禁止。藤田さんとアシスタントは常にしゃべりながら仕事をしている
- みんなで同じ映画を見てそれぞれが点数をつけて、感想を言う。このとき良い・悪いのロジックが重要。このロジックがないと人に伝わらない。
- 映画の感想を言うのは自分という人格と作品をわける練習だという。ロジックに対して議論するのでその人自身を否定したり褒めたりすることはない。これは普段仕事をしているときでもやらなきゃいけないことだと思った
- 漫画アシスタントを採用する上で一番重視するのは人柄。絵はそのうちうまくなるから。人柄がちゃんとしていないと信頼されない、教える気にもならないので成長速度が鈍くなる。これについては他の漫画家も同様
- 漫画で重要なのはキャラクター。ストーリー、絵のうまさは二の次らしい。キャラクターが立っていればどんなストーリーでも組み立てられる。キャラが立つというのはそのキャラがどんな次に行動をするのか予想できるということ。ストーリーが重要だと思ってたので驚いた。
- 経験がないことも漫画にする必要がある。経験したことだけ書いているとフィクションなんて書けない。経験がないならわかる人に質問しないといけない
- 新人がネームを通す時に大事なのは編集者ときちんとコミュニケーションをとること。質問して認識を合わせること。漫画家においてもコミュニケーション能力は非常に重要。
- セリフに個性が出る。ナルトの「だってばよ」という語尾は秀逸。これだけどんなキャラか想像できる。
- 「自分が楽しまないと読者を楽しませられない」という言葉はただの甘い言葉。自分が先に楽しんでどうする?徹底的に客観性を追求しなければならない。
- 漫画作りはミニマムチームで作者と編集者の二人だけ。この少人数体制はものづくりにおいてかなり特殊だと思った。だから編集者とのコミュニケーションの重要性が凝縮されており考えるだけで両者大変そうな仕事と感じた
マイナスな点
- 本の全体が会話調で進む。藤田さんと編集者で章が分かれているのだがどっちがどっちかわからなくなることが多くて読みづらいことがあった。藤田さんだけでいいのではと思った