スティーブンキングの小説創作論。こういう多作でヒット飛ばしている人の創作論はいつも自分にとってモチベーションになるので読んだ。たいていこういう本の要旨は「質より量。とにかく圧倒的な量(input,output)」なのだけど、本作も予想通りこの結果であった。
スティーブンキング氏は小説をよく読む。とにかく暇があれば読む。常に本を携帯しているくらいだ。仕事で役に立ちそうだから読むということはせずにおもしろそうな本、おもに小説を読むらしい。質より量の観点でいえば特にinputにあたる、読むことを推していた。
小説を書くことについても決まったルーティンがある。書くのは午前中だけ。午後はゆっくりしたり家族との時間を楽しむ。これは羨ましい。ルーティンがあるのは村上春樹にも似ているなと思った。村上春樹も決まった時間だけ書いて、毎日ランニングをしてささっと寝るスタイル。
書くときはハードロックやメタルを聴いているらしい。ガンズとか。お気に入りはメタリカ。音楽を聴くのは外の世界と遮断するため。意外すぎた。
また小説を書くときは最初に設定だけを決めて書き始める。詳細なプロットを決めて書くことはないらしい。こういうスタイルで書く小説家は他にも聞いたことあるけどスティーブンキングのようなミステリー作家がこれをやるのは意外だった。話しのオチが決まっていない状態で書き始められることがすごい。書いていると登場人物が勝手に物語を進めてくれるらしい。
自分も浪人生の時に短い小説を書いた経験や数年前に官能小説を書いたことがあるが確かに勝手にストーリーがどんどんできあがっていく感じはあった。しかし登場人物や設定がちゃんとしていないためによくわからない流れになったり、書き直しが発生したり、シュール展開に逃げていくしかなかった。
大学の英語の授業で先生が遠藤徹というホラー小説家という授業があって、当時小説の書き方について興味のあった自分はこの書いているとストーリーがどんどんできあがっていく感覚について遠藤氏に聞いたことがある。「設定だけ決めて登場人物がストーリーを勝手に作り上げていく感覚はありますか」と質問するとイエスと即答された。遠藤氏も設定だけ最初に作って登場人物に語らせるスタイルで、答えを聞いたとき自分は妙に感心した覚えがある。(この答えを聞けて満足した自分は授業はサボりがちで単位は落とした。)
スティーブンキングの小説はまだ読んだことがないから一度は読んでみたい。